シート工法×ペロブスカイト太陽電池はどれだけ“軽い”?—ガラス型シリコンとの重量比較と屋根耐荷重の考え方
目次
シート工法×ペロブスカイト太陽電池はどれだけ“軽い”?—ガラス型シリコンとの重量比較と屋根耐荷重の考え方
「屋根が重さに耐えられないかも…」そんな不安を“重量の中身”から解いていきます。シート工法で用いるペロブスカイト太陽電池の圧倒的な軽量性に注目し、ガラス型シリコンとの違いや屋根の耐荷重の見方を実務目線で整理します。高い軽量性によって、建物への負担を大幅に軽減できる可能性を探ってみましょう。
シート工法×ペロブスカイトの軽量性
ペロブスカイト太陽電池の軽量メリット
ペロブスカイト太陽電池は、フィルム状に形成できる次世代型の太陽電池で、その重量はシリコン系太陽電池の約10分の1を目標としています。これは、一般的なシリコン太陽電池モジュールが1㎡あたり11~13kg程度あるのに対し、ペロブスカイトでは約1kg/㎡と見積もられるほどの軽さです。
シート工法とは、この軽量なペロブスカイト太陽電池を基材シートを用いて建物屋根に施工する方法です。その結果、シリコンパネルでは設置が難しかった耐荷重の低い屋根にも設置が可能になります。必要最低限の取付金具で施工できるため、シート工法の太陽電池モジュールは重量面で画期的に軽量となります。
重量の内訳
では、その「重量の中身」を見てみましょう。ペロブスカイト太陽電池シートの重量は、大きく分けて次のような要素で構成されます:
- 発電層(ペロブスカイト薄膜): 太陽光を電気に変換するペロブスカイトの層です。極めて薄く塗布・印刷できるため重量はごくわずかです。
- 基材フィルム: 発電層を支持し保護するプラスチック製フィルムなどの下地です。これも軽量素材で構成され、1kg/㎡前後になります。
- 基材シート: 屋根に固定するためのシート基材部分です。シート工法では、金属製の架台の代わりに軽いシートが採用されています。
- 配線・固定金具: 発電した電気を取り出す配線や、シートを屋根に留める固定金具です。基材シートを最低限の固定金具で取り付けることで施工性を高めつつ重量の増加を最小限にしています。
参考文献
- 経済産業省「次世代型太陽電池戦略(骨子案)」(2024年9月)
ガラス型シリコンとの重量比較
1㎡あたりの重量差
従来のガラス基板型シリコン太陽電池パネルは、1㎡あたりおよそ12~15kg程度が標準的でした。一方、フィルム型のペロブスカイト太陽電池モジュールは1~4kg/㎡程度と非常に軽量で 、中でもシート工法のように金属架台を用いないタイプでは約3kg/㎡以下にまで重量を抑えられます 。
なぜkg/㎡で比較するのか
前述の通り、太陽電池モジュールの重量は「kg/㎡」で表記するのが通例です。これは屋根にかかる荷重が面積あたりで評価されるためです。異なるサイズや枚数のパネル同士でも、単位面積あたりの重量に直せば比較しやすくなります。
また建築分野では、屋根が支えられる荷重(耐荷重)も「何kg/㎡まで」という形で定められることが多く、この値とパネルの重量密度を照らし合わせて安全かどうか判断します。
例えば、あるパネルが大型で一枚20kgあっても、その大きさが2㎡であれば重量密度は10kg/㎡となります。逆に小型でも分厚いパネルなら密度は高くなります。このように1㎡あたりの重量で考えることで、太陽電池の種類ごとの屋根への負担を公平に評価できるのです。
建物設置型太陽光(BAPV)への恩恵
既存の建物に後付けで設置する太陽光発電(いわゆるBAPV: Building Attached Photovoltaics)の場合、屋根の耐荷重に余裕がないケースがあります。特に古い建物や軽量な屋根材を使った建物では、太陽光パネルの追加荷重が懸念材料でした。
しかし、シート工法のフィルム型太陽電池の軽量性によって、そのハードルは大きく下がります。重量わずか数kg/㎡程度であれば、多くの場合、既存屋根に追加しても問題ない範囲に収まります。これは耐荷重に余裕がない建物に導入できるという大きなメリットであり、BAPVにおいて非常に有利です。
参考文献
- 自然エネルギー財団「ペロブスカイト太陽電池に高まる期待:軽量化の動きが加速、窓・壁面一体型も」(2024年9月)
まとめ
シート工法×ペロブスカイト太陽電池は、その驚異的な軽さによって屋根への負担を大幅に低減できます。この軽量性のおかげで、耐荷重に不安のある工場や倉庫などの既存屋根でも太陽光発電を導入しやすくなり、屋根材への負担や耐震性への影響も最小限に抑えられます。
この記事を書いた人
未来戦略室 プロジェクトマネージャー 永石 暁さん
2010年新卒入社。国内外プロジェクトで機械エンジニアを経験後、現部署にて新規事業開発およびスタートアップ投資でエネルギー分野を担当し、「どこでも発電所」事業のリーダーを務める。早期からペロブスカイト太陽電池製造のスタートアップと連携し、プラントエンジニアの知見を活かして”シート工法”を発明。設置施工の立場から薄膜太陽電池業界に参入し、登壇・寄稿実績多数。趣味は温泉とラーメン屋巡り。