シート工法の施工手順ガイド|ペロブスカイト太陽電池の設置方法と屋根調査のポイント
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シート工法の施工手順ガイド|ペロブスカイト太陽電池の設置方法と屋根調査のポイント
フィルム型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池やカルコパイライト太陽電池など)は、従来のシリコン型に比べ薄く・軽く・曲がる特性を持ちます。そのため、耐荷重性の低い屋根や建物の壁面といった場所にも設置でき、次世代型太陽電池として期待されています。
このフィルム型太陽電池の施工法として開発されたシート工法は、フィルム型としての特性を損なわずに様々な場所へ設置でき、施工工程(施工フロー)も簡便で安全性の高い工法です。
本記事では、シート工法によるフィルム型太陽電池の施工手順ガイドをお届けします。
シート工法の全体フロー
従来型の課題を踏まえ、ペロブスカイトなどフィルム型太陽電池向けに開発された「シート工法」では、施工フロー自体を簡素化することで大幅な施工速度向上を実現しています。
シート工法の標準的な施工手順は、「組み立てる・敷き並べる・固定する」というシンプルな3ステップにまとめられます。それぞれのステップを詳しく見てみましょう。
組み立てる(モジュール一体化)
シート工法では、現場施工の前工程として発電モジュールの組立てを行います。フィルム型太陽電池をあらかじめシート状の基材と一体化したモジュールを製造・準備します。
具体的には、薄くて軽いフィルム型太陽電池を遮熱シートなどのシート基材の上に載せて貼り付け、一枚の大判モジュールとして組み立てておくイメージです。このモジュール内部では太陽電池同士が接続されており、従来はパネルごとに必要だった結線作業が工場製造時に済んでいる点が特徴です。現場では完成したモジュールを取り出して設置するだけなので、煩雑な組立作業を大幅に削減できます。
敷き並べる(屋根上への配置)
次に、組み立て済みのモジュールを現場で屋根上に敷き並べる工程です。シート工法用のモジュールは非常に軽量で薄く、人力で容易に持ち運びできるサイズ・重さになっています。
具体的には、モジュールは重量が約2kg/㎡と従来型(ガラスパネル)の6分の1以下に抑えられており 、厚さも1cm未満と薄型です 。このため耐荷重性の低い屋根でも扱いやすく、重機なしでも人力施工が可能です。
作業員がモジュールを次々と手で運んで所定の位置に並べていくだけで設置が進むため、短時間で広い面積をカバーできます。実際、北海道苫小牧市やJR博多駅などで行われた実証試験でも、軽量なフィルム型モジュールを人力で迅速に配置できる施工性が確認されています。
固定する(固定具による止め付け)
敷き並べたシートモジュールは、専用の固定具で簡単に固定します。
シート工法では「グリッパー」と呼ばれる半筒状の金具を用いて、屋根にシートモジュールを挟み込むように留め付ける仕組みを採用しています。この固定治具にはスリットが入っており、工具を使って所定の位置に締め付けるだけでモジュールを屋根に固定できます。
従来のように架台をボルトで組み立ててからパネルをねじ留めする手順と比べ、ワンアクションで取り付け可能な点が大きな利点です。
また、固定のために屋根へ穴あけ工事をする必要がなく、防水性能を損ねないメリットもあります。
建物の事前調査
まず屋根の構造と強度を確認し、太陽光パネルを設置する荷重に耐えられるか評価します。
一般的に屋根は1㎡あたり10kg以上の荷重に耐えられることが推奨されますが、シート工法で用いるモジュールの重量はそれより格段に軽く(約2kg/㎡程度)設置による負荷は小さく抑えられます。
屋根全体に作用する風の力も考慮します。特に折板屋根に太陽光パネルを設置する場合、屋根そのものとパネルに同時に風荷重がかかるため、固定方法を風圧に見合った強度で計画する必要があります。
さらに、折板屋根への施工では、シート工法で用いる固定金具との取り合いのためどのようなタイプか確認します。
折板屋根の種類(嵌合式、重ね式など)
折板屋根(せっぱんやね)とは、金属板を波形に折り曲げて成型した屋根材で、工場や倉庫によく用いられています。その横方向の継ぎ目(接合部)の構造により、いくつかのタイプに分類されます。代表的な折板屋根は「はぜ式」「重ね式」「嵌合(かんごう)式」の3種類です。
はぜ式(はぜ締め式)
鋼板同士の端を折り重ねて咬み合わせるタイプです。屋根表面にボルトが露出しないため雨漏りのリスクが低い一方、重ね式に比べ強風に対する耐性はやや劣る傾向があります。
重ね式(ボルト締め式)
鋼板の端同士を重ね、上からボルトで固定するタイプです。屋根の山頂部にボルト頭が並んで露出し、経年でサビが発生しやすいため定期的な点検や締め直し・交換が必要です。
嵌合式
左右対称の断面形状を持つ屋根材を使い、継ぎ目に専用のキャップをはめ込んで固定するタイプです。重ねタイプのようにボルト頭が露出しないため雨漏りのリスクが低く、美観にも優れます。
シート工法と折板屋根の種類
それぞれの折板屋根で山(ハゼ)の形状が異なるため、シート工法で取り付ける際も適した固定金具を選ぶ必要があります。
例えば、はぜ式の屋根では山形のハゼ部分に挟み込むタイプのクランプ金具を用い、重ね式の場合は既存のボルト穴を利用するアタッチメントなどが使われます。
ハゼの形と固定方法はメーカーごとに少しずつ異なりますが、いずれの場合も事前に屋根材に適合した専用金具を用いることで、屋根を傷つけず安全に太陽光モジュールを固定できます 。
まとめ
シート工法の手順と屋根の確認ポイントをご紹介しました。従来の太陽電池と比べて非常に少ない手順で施工できます。
施工コスト削減によりペロブスカイト太陽電池の普及に貢献できる施工技術となっています。
この記事を書いた人
未来戦略室 プロジェクトマネージャー 永石 暁さん
2010年新卒入社。国内外プロジェクトで機械エンジニアを経験後、現部署にて新規事業開発およびスタートアップ投資でエネルギー分野を担当し、「どこでも発電所」事業のリーダーを務める。早期からペロブスカイト太陽電池製造のスタートアップと連携し、プラントエンジニアの知見を活かして”シート工法”を発明。設置施工の立場から薄膜太陽電池業界に参入し、登壇・寄稿実績多数。趣味は温泉とラーメン屋巡り。