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施工はどれだけ速い?シート工法の施工速度と工期短縮のコツ—ガラス型シリコンと比較

シート工法
施工はどれだけ速い?シート工法の施工速度と工期短縮のコツ—ガラス型シリコンと比較

目次

    [2025年度下半期最新版]ペロブスカイト太陽電池とは?
    実用化の時期・変換効率・課題を施工会社が基礎から解説

    太陽光発電設備の施工速度を高め、工期短縮を図るにはどこにボトルネックがあるのでしょうか。また、次世代のシート工法ではそれらの課題がどう解決されるのでしょうか。本記事では、従来のガラス型シリコン太陽電池パネルの設置における課題と、フィルム型太陽電池向けのシート工法による施工フロー、さらに両者の施工性比較や施工事例について、わかりやすく解説します。

    施工速度のボトルネック

    太陽光発電システムの設置工事では、主に以下の3つの作業工程が施工速度のボトルネックとなります。それぞれの工程で何が課題となり時間を要するのか見てみましょう。

    荷揚げ(屋根への資材運搬)

    屋根にパネルや架台を運び上げる「荷揚げ」作業は施工速度の大きなボトルネックです。

    一般的なシリコン系太陽光パネルは1枚あたり約20kgと重量があり、架台も一基あたり約13kgにもなります 。人力でも運搬は可能ですが、安全かつ効率を考慮するとクレーンなど重機で屋根上へ吊り上げる場合が多く、この段取りや重機手配に時間がかかります 。実際、公共施設の屋上に約230枚のパネルを設置したケースでは、重い機材の搬入は休館日にクレーンでまとめて行い、その後の取り付け作業に入りました。

    このように重量物の荷揚げ工程がスムーズに行えないと、全体の工期が延びる原因になります。

    架台組立

    次にボトルネックとなるのが架台(取り付け架構)の組立作業です。屋根や地面に取り付け脚やレールを設置し、太陽光パネルを載せる架台を組み立てる工程は、パネル設置工事の中でも特に時間と手間を要します。

    例えば地上設置型の大規模太陽光発電では、基礎工事完了後に架台の組立だけで1~2週間程度かかり、その後のパネル取り付け自体は数日~1週間程度という報告があります。

    屋根上の工事でも、架台の配置位置を測定(墨出し)し、金具を固定する作業には相応の時間が必要です。また、高所作業となるため安全対策もしながらの作業となり、作業効率が落ちやすい部分でもあります。

    架台組立配線(電気接続工事)

    3つ目のボトルネックはパネル間やパワーコンディショナ(インバータ)への配線作業です。

    多数のパネルを直列・並列にケーブルで結線し、接続箱やインバータまで配線する必要があるため、大規模になるほど配線点数も多くなり作業量が増大します。

    配線作業はパネル設置と並ぶ重要工程であり、丁寧な作業が求められる分、施工速度のネックになりやすいのです。配線ミス防止のチェックや絶縁処理・接地作業なども含めると、配線工程の完了には相応の時間を見込んでおく必要があります。

    シート工法の全体フロー

    従来型の課題を踏まえ、ペロブスカイトなどフィルム型太陽電池向けに開発された「シート工法」では、施工フロー自体を簡素化することで大幅な施工速度向上を実現しています。

    シート工法の標準的な施工手順は、「組み立てる・敷き並べる・固定する」というシンプルな3ステップにまとめられます。それぞれのステップを詳しく見てみましょう。

    組み立てる(モジュール一体化)

    シート工法では、現場施工の前工程として発電モジュールの組立てを行います。フィルム型太陽電池をあらかじめシート状の基材と一体化したモジュールを製造・準備します。

    具体的には、薄くて軽いフィルム型太陽電池を遮熱シートなどのシート基材の上に載せて貼り付け、一枚の大判モジュールとして組み立てておくイメージです。このモジュール内部では太陽電池同士が接続されており、従来はパネルごとに必要だった結線作業が工場製造時に済んでいる点が特徴です。現場では完成したモジュールを取り出して設置するだけなので、煩雑な組立作業を大幅に削減できます。

    敷き並べる(屋根上への配置)

    次に、組み立て済みのモジュールを現場で屋根上に敷き並べる工程です。シート工法用のモジュールは非常に軽量で薄く、人力で容易に持ち運びできるサイズ・重さになっています。

    具体的には、モジュールは重量が約2kg/㎡と従来型(ガラスパネル)の6分の1以下に抑えられており 、厚さも1cm未満と薄型です 。このため耐荷重性の低い屋根でも扱いやすく、重機なしでも人力施工が可能です。

    作業員がモジュールを次々と手で運んで所定の位置に並べていくだけで設置が進むため、短時間で広い面積をカバーできます。実際、北海道苫小牧市やJR博多駅などで行われた実証試験でも、軽量なフィルム型モジュールを人力で迅速に配置できる施工性が確認されています。

    固定する(固定具による止め付け)

    敷き並べたシートモジュールは、専用の固定具で簡単に固定します。 シート工法では「グリッパー」と呼ばれる半筒状の金具を用いて、屋根にシートモジュールを挟み込むように留め付ける仕組みを採用しています。この固定治具にはスリットが入っており、工具を使って所定の位置に締め付けるだけでモジュールを屋根に固定できます。

    従来のように架台をボルトで組み立ててからパネルをねじ留めする手順と比べ、ワンアクションで取り付け可能な点が大きな利点です。

    また、固定のために屋根へ穴あけ工事をする必要がなく、防水性能を損ねないメリットもあります。

    ガラス型シリコンとの施工性比較

    以上のように、シート工法は従来のガラス封止されたシリコン型パネル方式と比べて、様々な面で施工性が向上しています。ここではガラス型シリコンパネル工法との具体的な比較ポイントを整理します。

    重量と荷揚げの容易さ

    従来のシリコンパネルはガラス板やアルミ枠を含むため重量があり、大面積の設置には重機による搬入が事実上不可欠でした 。一方、シート工法のフィルム型モジュールは前述の通り極めて軽量(従来比1/6以下)であり 、人力での搬入・設置が可能です。この違いは高所や広範囲への施工時間短縮に直結します。

    架台工事の有無

    シリコンパネルの場合、屋根材に支持架台を固定しパネルを一枚一枚取り付ける必要があり、架台組立とパネル設置の二重の工程が発生していました 。シート工法では架台やフレーム自体を不要とし 、シート状の架台に太陽電池を組み込んだモジュールとして提供するため、現場での架台施工が不要になります。その結果、ボルト締めや調整といった作業を省略でき、施工手順が簡略化されています。

    配線作業の効率

    シリコンパネル工法では何十枚、何百枚というパネル相互を接続する配線作業が発生し、特に大規模設置では結線ミス防止の確認作業含め時間がかかります 。これに対しシート工法では、複数の太陽電池を統合したモジュールごとに接続されているため、現場で接続するポイント数が減ります。例えば10枚分の太陽電池モジュールを一体化したシートモジュールであれば、現場での結線は従来の1/10に減る計算となり、結果として配線に費やす時間も短縮されます(接続ミスのリスク低減にも寄与)。

    総工期とコスト

    上記のような施工性向上により、シート工法ではトータルの工期短縮と施工コスト削減(従来型シリコン太陽電池比で約35%削減)を見込んでいます。コストには資材費だけでなく人件費(作業時間)が大きく影響するため、作業時間短縮=コスト低減につながります。特に人手不足が課題となる将来の太陽光発電大量導入において、シート工法のような省力化技術は有効な解決策の一つといえるでしょう。

    実施例

    最後に、シート工法の施工速度が実際の現場でどの程度発揮されているか、実施例を紹介します。現状では実証段階の小規模案件が中心ですが、その中で得られた実績は今後の可能性を示唆しています。

    物流倉庫への施工例

    ある倉庫の折板屋根にフィルム型太陽電池をシート工法で施工したところ、1人の作業者が1日あたり100㎡近くの面積を施工できるという驚異的な速度が記録されました。
    これは軽量なモジュールを人力で運びつつ、貼り付けと固定をスピーディーに行えた結果であり、短期間で所定容量の設置を完了できたことを意味します。また、この実証を通じて安全面や発電性能にも問題がないことが確認されました。

    鉄道駅のホーム屋根の施工例

    ホーム屋根上でペロブスカイト太陽電池を設置し、短時間施工かつ安全に作業が行えることを実証しました。
    駅設備という限られた夜間作業時間・安全厳守の条件下でも、シート工法モジュールを用いたことで迅速に設置が完了しています。これは小規模ながら公共インフラへの適用例であり、従来工法では工期の制約から難しかったケースです。

    まとめ

    シート工法は、その施工の容易さによって工期を大幅に低減できます。つまり、人件費の削減や施工者の人手不足の解消に役立ちます。
    ペロブスカイト太陽電池普及の切り札として活躍させていきます。

    未来戦略室 プロジェクトマネージャー 永石 暁 さん

    この記事を書いた人

    未来戦略室 プロジェクトマネージャー 永石 暁さん

    2010年新卒入社。国内外プロジェクトで機械エンジニアを経験後、現部署にて新規事業開発およびスタートアップ投資でエネルギー分野を担当し、「どこでも発電所」事業のリーダーを務める。早期からペロブスカイト太陽電池製造のスタートアップと連携し、プラントエンジニアの知見を活かして”シート工法”を発明。設置施工の立場から薄膜太陽電池業界に参入し、登壇・寄稿実績多数。趣味は温泉とラーメン屋巡り。