シート工法の耐風性は大丈夫?施工ガイドラインで読み解く安全設計と台風対策を徹底解説
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シート工法の耐風性は大丈夫?施工ガイドラインで読み解く安全設計
薄くて軽いフィルム型太陽電池を屋根や壁に取り付ける「シート工法」。台風の多い日本で、「シート状の太陽電池は風で飛ばされないの?」と不安に思う方もいるでしょう。
しかしご心配なく。シート工法には風による揚力(浮き上がりの力)への対策がしっかり織り込まれています。この記事では、施工ガイドラインや技術資料をひもときながら、シート工法の耐風性(風に対する安全設計)について解説します。
風から受ける揚力
建物や屋根に風が当たると、風荷重(風による力)が生じます。風荷重には、風上側で物を押す「正圧」と、風下側で物を引っ張る「負圧」があります。
例えばビルの壁では、風が当たる建物の正面に正圧、裏側に負圧が発生し、屋根でも上面に負圧(吸い上げる力)が生じます。これが屋根材やパネルを持ち上げてしまう揚力の正体です。シート工法の耐風設計を理解するには、まずこの負圧による揚力のメカニズムを知る必要があります。
負圧(浮き上がる力)の発生
風が屋根の上を吹き流れると、屋根表面の空気が引き剥がされて負圧(真空のような吸引力)が生じます。飛行機の翼が揚力を生むのと同じ原理で、屋根や薄いシートにも上向きの力が働くのです。
この負圧は一瞬で発生し、固定が不十分だと屋根材やパネルを浮き上がらせてしまいます。建築基準法の計算でも、部材が受ける風荷重としてこうした瞬間的な突風の吸引力(ピーク圧)を考慮する仕組みになっています 。シート工法でも、強風時にシートごと太陽電池パネルが浮かないよう、この負圧に耐える設計が求められます。
局部負圧と端部ゾーン
特に注意すべきは屋根や壁の端部ゾーンです。建物の角や屋根の端では、風の巻き込み渦が発生することで局部負圧が非常に大きくなります。
例えば屋根の隅角部では、中央部の数倍もの強い吸い込み力が一瞬作用することが知られています。そのため、建築物の設計では部位ごとに「ピーク風力係数」というものが定められ、端部や隅角部では中央部よりも厳しい値になっています。
太陽電池パネルの設置について定めたJIS C 8955(太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法)や施工ガイドラインでも、屋根の縁やコーナー部では特に大きな風圧を想定して安全側に設計するよう求められています。
シート工法の工夫 開孔部(風の抜け道)による負圧除去
強風対策では、「風の抜け道」を作ることで負圧(吸い上げる力)を和らげる方法があります。シート工法は、実はこの考え方を取り入れたユニークな設計になっています。
太陽電池シートを取り付ける固定金具を全ての箇所でなく一つ飛ばしの千鳥配置にすることで、シートどうしに隙間(開孔部)を設けているのです。風のシート上への抜け道を部分的に作ることで、シート上下面の圧力差を逃がし、シートがふわっと浮き上がるのを防いでいます。
いわばパラシュートに通気孔を開けて膨らみにくくするようなイメージです。シート工法独自のこうした工夫により、フィルム型太陽電池の軽さ・薄さと耐風性を両立させているのです。
風洞試験・CFDの活用
風洞試験
太陽電池パネルの設置に関するJIS C 8955では、風荷重の算定方法が規定されていますが、屋根形状やパネル配置が特殊な場合は規格の適用範囲外となることもあります。
そのためガイドラインでは、必要に応じて風洞実験による特別な検討を行い風力係数(風による力の大きさの係数)を確認するよう推奨されています。
CFD
一方、近年はコンピュータ上で風の流れを解析できるCFDが発達し、設計段階で細部の風圧分布までシミュレーションできるようになりました。
シート工法を開発した日揮株式会社のエンジニアも、CFDを用いて様々な風向・風速で屋根上の気流を再現し、シートと建物にかかる力を解析しています。
シート工法の安全設計
このように数値シミュレーションと実験を組み合わせて風の影響を最小化することが、シート工法の安全設計につながっています。
例えば固定金具の配置や形状を変えた場合にどれだけ揚力が軽減されるか、といった検討もCFD上で行い、最適な設計が導かれているのです。最終的には風洞試験で実物大の検証も行い、計算どおりの耐風性能が確保されていることを確認しています。
シート工法はこのような入念な検証プロセスを経て、安心して使える施工法となっています。
まとめ
以上、シート工法の耐風性能について解説しました。シート工法は、風で煽られやすいように見えても、風の力をいなし・受け流す工夫が凝らされています。施工ガイドラインに忠実に従い、最新のシミュレーション技術や実験データを活用することで、台風にも負けない太陽電池システムを実現できます。
この記事を書いた人
未来戦略室 プロジェクトマネージャー 永石 暁さん
2010年新卒入社。国内外プロジェクトで機械エンジニアを経験後、現部署にて新規事業開発およびスタートアップ投資でエネルギー分野を担当し、「どこでも発電所」事業のリーダーを務める。早期からペロブスカイト太陽電池製造のスタートアップと連携し、プラントエンジニアの知見を活かして”シート工法”を発明。設置施工の立場から薄膜太陽電池業界に参入し、登壇・寄稿実績多数。趣味は温泉とラーメン屋巡り。