[2025年度下半期最新版]ペロブスカイト太陽電池とは?実用化の時期・課題を施工会社が基礎から解説
目次
[2025年度下半期最新版]ペロブスカイト太陽電池とは?
実用化の時期・変換効率・課題を施工会社が基礎から解説
「軽くて薄い太陽電池を屋根や壁に設置できる。」
―そんな未来を現実にしようとしているのがペロブスカイト太陽電池です。世の中から大きな期待を寄せられています。
本記事では、ペロブスカイト太陽電池の国内メーカーのスタートアップへの出資を担当し、屋外実証試験を3年以上行った実績を持つ日揮株式会社の社員が、強みと弱みを整理し、国の政策や規格の観点からどのように社会実装へ進んでいるか整理しました。
実用化の見通し
ペロブスカイト太陽電池はいつ実用化して、市場投入されるのでしょうか。
量産化が開始される時期について解説します。
実用化はいつ?
2026〜2028年にかけては、日本国内で合計数十〜数百MW/年規模の「ニッチながらも商用案件として成立する市場」が立ち上がると考えられます。
- 2026年:一部の公共施設に小~中規模で導入開始
- 2027年:一部の民間施設に小~中規模で導入開始
- 2028年:市場の需給が取れ始め、多くの施設への導入が進む
根拠となる国内の動向をまとめます。
- 積水化学工業(株)の工場建設
堺市のシャープ堺工場建屋を取得し、100MWラインを2027年4月稼働、2030年までに1GW級体制を構築する投資計画を公表しています。 - エネコートテクノロジーズ(株)の工場建設
同社は2025年から工場建設に着手し、2027年から本格稼働させる見込みと語っています。 - JETの製品認証
一般財団法人電気安全環境研究所(JET)はペロブスカイト太陽電池の性能評価を開始しました。すでに、積水化学工業(株)の事業会社である積水ソーラーフィルムの製品が合格しています。 - 導入支援事業
自治体・民間企業向けに、初期フェーズの普及のため要件を満たす案件に補助を出す支援事業が環境省主導で開始されています。
参考文献
- 1. 日経ビジネス「シャープ堺工場を「居抜き」 積水化学、ペロブスカイト電池量産へ時間買う」 (2025年8月)
- 2. 江南タイムズ「トヨタ系も出資、世界最高「30%変換効率」…京都発“曲がる太陽電池”が100億円で量産化!中国勢と真っ向勝負へ」 (2025年6月)
- 3. JET「フィルム型ペロブスカイト太陽電池の性能評価」 (2025年)
- 4. 環境省「ペロブスカイト太陽電池の需要創出に向けて」 (2025年5月)
基礎(仕組み/材料/製造プロセス)
ペロブスカイト太陽電池とは
ペロブスカイト太陽電池(PSC)は、ペロブスカイト結晶構造の発電層を持つ次世代型のフィルム型太陽電池です。特徴は、軽量で柔軟な構造と、印刷技術を使った低コストな製造方法にあります。従来のシリコン系と比べると極めて薄く、建物や曲面にも容易に設置できるます。そのため、新しい市場を切り開く存在として期待されています。
材料の特徴
主な材料にはヨウ素や鉛の化合物が使われます。特にヨウ素は日本が世界シェア約3割を占め国内調達可能な資源です。
また、セルをプラスチックフィルム基板上に形成すれば非常に軽量なモジュールになります。従来のシリコンパネルのセルは、頑丈なガラス基板と金属等のフレームで保護する必要があります。それと比べてPSCは約1/10の重量・1/20の体積です。建材との一体化やリサイクル時の処理負荷低減にも優位性があります。含有される鉛もごく微量(約0.5g/㎡)で、安全に回収・再利用する仕組みづくりが進められています。
これにより、屋根への荷重負担が少なく、将来的なリサイクル工程でも有利になります。
製造プロセスと低コスト化
PSCは「塗布・印刷」で作れる点が画期的です。印刷機を使ってロール状に連続製造する「ロールtoロール方式」によって、大量生産とコスト削減が可能となります。これはシリコン太陽電池のバッチ式プロセスと比べ、はるかに効率的な生産方法です。
参考文献
- 1. 資源エネルギー庁「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)」 (2024年2月)
- 2. 資源エネルギー庁「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(後編)」 (2024年2月)
何が強み?(低コストポテンシャル・軽量性・高効率)
ペロブスカイト太陽電池の強みとして、低コスト化のポテンシャル、軽量柔軟性、そして高い変換効率が挙げられます。
製造コストの優位性
従来のシリコンは高価な装置と工程を必要としますが、ペロブスカイトは塗布・印刷プロセスで作れるため、製造コストが大幅に下がる可能性を秘めています。量産体制が整えば、太陽光発電のさらなる普及に直結するでしょう。
軽量性と柔軟性
1㎡あたり十数キログラムあるシリコンパネルに比べ、PSCは数百グラム単位の軽さ。工場や倉庫の薄い屋根、あるいはビルの壁面など「これまで不可能だった場所」にも設置できる点は非常に大きな差別化要素です。屋根荷重をほとんど増やさず設置でき、曲面にも貼り付け可能な柔軟性があります。従来パネルでは難しかった場所にも対応できることで設置先の大幅な拡大が見込まれています。
変換効率と進歩
変換効率についても開発の進展が著しく、近年はシリコン系に迫る水準に達しつつあります。ペロブスカイト太陽電池のセル効率は、この10年で約26%まで向上しました (シリコンが同程度に達するまでに要した期間の5分の1程度)。現在の小型セルで25%前後、モジュールでも15~20%台に達しており 、シリコンとのタンデム型では30%超も視野に入るなど 、高効率な太陽電池として大いに期待されています。
参考文献
- 1. 経済産業省「次世代型太陽電池戦略」 (2024年11月)
- 2. 自然エネルギー財団「ペロブスカイト太陽電池に高まる期待」 (2024年9月)
何が課題?(耐久性・封止・スケール・環境対応)
耐久性と封止技術

最大の課題は耐久性(寿命)で、発電層が水分や熱に弱く劣化しやすいため、シリコンほどの長期間の安定利用が現状では困難です 。真夏の高温多湿や屋外の紫外線環境で性能を維持するには、材料面・構造面で工夫が必要です。このため、セルを保護する封止技術の開発が重要になっています。実際、メーカー各社は封止材や層間構造を改良することで耐久性向上に取り組んでいます。例えば積水化学工業(株)は液晶パネル向けのシール技術を応用し、セル内部に水分やガスが入らない多層構造を開発した結果、約10年相当の耐久性を実現しました 。製品設計やメーカーの工夫次第で耐久性は大きく変わることが示されています。
大面積化の壁
小面積セルでは高効率でも、大型化すると効率低下や寿命短縮が起こりやすい傾向があります。発電層の均質性確保や封止が難しいためです。現在、印刷プロセスの精度向上やモジュール封止構造の研究により、大型モジュール製造技術の確立が進められています。
環境対応
環境対応の面では、材料に微量ながら鉛を含む点が課題です。ただし、前述の通り含有量はごく僅かであり、封止技術の向上で使用中の流出リスクは低減できる見込みです。さらに、FIT/FIP制度の認定条件として鉛など有害4物質の含有情報登録を義務付ける措置が導入されました。
一方、ペロブスカイト太陽電池は軽量で薄いプラスチックフィルム主体の構成ゆえ、廃棄時の解体・搬出が容易である利点もあります 。現在、国内ではリサイクル技術の開発実証も開始されており、環境負荷を低減しつつ大量導入する体制づくりが進行中です。
参考文献
- 1. 一般財団法人 機械振興協会経済研究所「次世代型太陽電池産業におけるサプライチェーンの構築と課題 報告書」 (2025年2月)
2025年最新情報
グリーンイノベーション基金の次世代太陽電池実用化事業では、国内企業のペロブスカイトメーカーが環境省の補助を受けて開発を進めています。2025年7月16日にパシフィコ横浜にてその成果報告会が行われました。
そこでは各社の開発情報が報告され、特に耐久性試験の結果が明確になりました。
各社とも高温・高湿度環境下で行う耐湿熱試験ではおよそ劣化率1%/年と高い水準をクリアしていました。
一方で、日揮で実施している屋外実証試験を含め、高温・高湿度に強い日射が加わると劣化が加速することがあるとわかってきています。今後は光の照射も含めた耐久性が改善されていくと予測されます。
参考文献
- 1. NEDO「「NEDO再生可能エネルギー分野成果報告会2025」開催報告 | NEDO」(2025年9月)
用途・設置場所
期待される用途
用途面では、ペロブスカイト太陽電池の軽量・フレキシブルという特長から、従来設置が難しかった様々な場面での活用が期待されています。
BAPV(後付け設置)
まず建築分野では、既存建物に後付けするBAPV(Building Applied PV)用途です。例えば工場や倉庫の薄い屋根、ビルの壁面など耐荷重が小さい場所でも、フィルム型太陽電池なら追加重量をほとんど気にせず設置できます。実際、フィルム状モジュールを貼り付けることで発電所化する屋根・壁の実証が各地で進んでおり、苫小牧埠頭が所有する物流倉庫の屋根・壁での通年実証が日揮とエネコート・テクノロジーズによって実施されています。

「次世代太陽電池戦略」(2024年11月)
BIPV(建材一体型)
次に新築建材一体型(BIPV)への展開です。ガラス窓や外壁パネルそのものにペロブスカイトセルを組み込んでしまうことで、建物と一体化した発電体とする構想です 。将来的にはビルのカーテンウォールや住宅の窓ガラスが発電デバイス化することも十分に考えられます。
モバイル・IoT
室内光でも稼働するIoTデバイス電源への利用が注目されています。京大発ベンチャーの株式会社エネコート・テクノロジーズは、屋内センサー用の小型PSCや建物内装向けの製品を開発中です 。この技術が実用化すれば、工場の無線センサーやウェアラブル端末などで電池交換不要の自己充電が可能になり、メンテナンス負荷の大幅低減につながります。その他、曲げられる特性を活かして車両やドローンの表面に貼り付ける応用も研究されています。
結晶Siとの棲み分け・選び方
最後に、ペロブスカイト太陽電池と結晶シリコン太陽電池の関係性と使い分けについて整理します。現時点では、ペロブスカイトがただちにシリコンを置き換える状況ではなく、棲み分けて併用する形が現実的です。
結晶Siの強み
結晶Si太陽電池は50年以上の実用実績があり、耐久性・信頼性に優れる点が強みです。メーカー保証期間も通常25年前後と長く、実際には30年以上発電する例もあります。そのため、長期間にわたり安定した発電が求められる用途(メガソーラーなど大規模発電所、メンテナンスしにくい場所、過酷な屋外環境下の設備)は依然として結晶シリコンが第一選択肢となります。
ペロブスカイトの強み
軽さや柔軟性が求められる用途ではペロブスカイトが真価を発揮します。耐荷重制約のある屋根や壁面、持ち運び可能なモバイル機器への搭載など、シリコンでは実現困難だった場面でPSCが有力な選択肢となります。例えば広い倉庫の屋根に太陽光パネルを追加したくても重量オーバーで諦めていたケースで、PSCなら設置可能となるかもしれません。
棲み分けの現実解
今後数年においては、「重量物でも長寿命が必要な箇所はシリコン、重量制限や曲面設置など特殊なニーズ箇所はペロブスカイト」というように、それぞれのメリットを活かした棲み分けがされるでしょう。両者は競合関係というより補完関係にあり、日本のエネルギー自給や再エネ拡大のためには、シリコン系既存技術との戦略的棲み分けで相乗効果を発揮させることが重要とされています。次世代のエネルギー社会に向け、用途に応じた太陽電池の選択肢が増えることは心強いと言えます。
また、結晶シリコンの上にペロブスカイトを重ね、発電効率を向上させるタンデム型太陽電池の開発も進められています。より広い範囲の波長の光を吸収するし今まで以上の発電効率で発電できるため、実用化に期待が寄せられています。
参考文献
- 1. 経済産業省「次世代型太陽電池に関する国内外の動向等について」 (2024年5月)
まとめ
以上、ペロブスカイト太陽電池の基礎から強み・課題、実用化の見通しまで網羅して解説しました。
ペロブスカイト太陽電池は「軽量・柔軟・高効率」という強みを持ちつつ、耐久性や大面積化、環境対応といった課題を抱える技術です。2025年以降の実用化を見据え、政策・標準化・産業投資が進む中で、シリコンとの棲み分けを経て大きく普及していくことが期待されます。
この記事を書いた人
未来戦略室 プロジェクトマネージャー 永石 暁さん
2010年新卒入社。国内外プロジェクトで機械エンジニアを経験後、現部署にて新規事業開発およびスタートアップ投資でエネルギー分野を担当し、「どこでも発電所」事業のリーダーを務める。早期からペロブスカイト太陽電池製造のスタートアップと連携し、プラントエンジニアの知見を活かして”シート工法”を発明。設置施工の立場から薄膜太陽電池業界に参入し、登壇・寄稿実績多数。趣味は温泉とラーメン屋巡り。