工場屋根の遮熱対策に!シート工法の効果とメカニズムを解説
目次
工場屋根の遮熱対策に!
シート工法の効果とメカニズムを施工会社が解説
屋根上の温度が下がると空調の電力消費はどう変わるのでしょうか?
体感で「涼しい」と感じる効果を、実測データと試算で数字にしてみます。薄膜太陽電池と遮熱シートを組み合わせた「シート工法」による屋根遮熱対策について、その基礎からメリットまでわかりやすく解説します。
遮熱の基礎(屋根の遮熱効果と反射・放射・断熱の違い)
まず「遮熱」と「断熱」の違いを理解していますか?似た言葉ですが実は意味が異なります。
断熱材は熱を伝えにくくして“ゆっくり通す”素材であるのに対し、遮熱材は熱(特に輻射熱)を反射して“跳ね返す”素材です。
太陽から来る熱の伝わり方には3種類あり、空気の流れで移る”対流熱”、物質を介して移る”伝導熱”、赤外線によって直接伝わる”輻射熱”があります。
建物の中に入ってくる熱の約75%は輻射熱と言われますが、一般的な断熱材ではこの輻射熱を十分に防げません。断熱材は熱の進行を遅らせるものの、吸収した熱を蓄えて後から放出してしまい、夏は室内が暑く、冬は冷える原因になっていました。
一方、屋根や壁で遮熱を行えば、熱源である太陽の輻射エネルギーを跳ね返して室内に入る前に防ぐことができます。
断熱が「熱を伝えにくくする壁」なら、遮熱は「熱そのものを鏡のように反射して入れないシールド」とイメージすると分かりやすいでしょう。
参考文献
- 1. 株式会社ライフテック、遮熱材の特性 | 株式会社ライフテック
- 2.株式会社佐武、遮熱と断熱の違いについて|リフレクティックスのことなら株式会社佐武へ
なぜ効く?薄膜太陽電池+遮熱シート工法のメカニズム
工場や倉庫の屋根で薄膜太陽電池+遮熱シートを使うシート工法は、太陽光を遮りつつ熱を反射することで大きな遮熱効果を発揮します。そもそも工場の室内が猛烈に暑くなる一因は、真夏に焼けた屋根が発する輻射熱です 。特に金属製の折板屋根では真夏に表面温度が約80℃にも達し、屋根からの放射によって室温が大幅に上昇します。
そこで、シート工法によって太陽電池を設置すると直射日光が遮られ、パネル直下の屋根温度が約15℃も下がる効果が実験で確認されています。シート工法には高い遮熱性を持つシートを選定しており、太陽光による輻射熱を約90%以上反射し、屋根への熱の伝わりを遮断します。
シート工法では太陽電池モジュールとシートを屋根に直接ベタ付けしないため、屋根表面とシートの間に空気層(エアギャップ)が生じる点も重要です。この薄い空気の層が断熱層の役割を果たし、熱せられた屋根から伝わる熱を緩和してくれます。例えば、シートを折板屋根の上に施工すると、屋根から放射される熱がシートで遮られ、空気層に熱がこもりにくくなります。その結果、屋根裏への放射熱が大幅に減り、室内への熱侵入も抑えられるのです。
被覆率・エアギャップ・材料の放射率がポイント
被覆率(屋根の覆い率)
屋根表面の何割をパネルや遮熱シートで覆うかが効果に直結します。覆う面積が広いほど直射日光を遮れるため、屋根全体の温度上昇を抑制できます。特に広い工場屋根では全面近くをカバーすることで均一な遮熱効果が得られ、屋根温度を大幅に下げられます。
一方、部分的な設置だと未覆部から熱が伝わるので、高被覆率で施工することがポイントです。フィルム型太陽電池は軽量なため耐荷重の限界がある屋根でも広範囲に設置可能で、被覆率を高めやすい利点があります。
エアギャップ(空気層)
前述の通り、シート工法では屋根材と遮熱シートの間に薄い空気層ができます。この空気層は優れた断熱効果を持ち、熱の伝導と対流を抑えてくれます。太陽電池が太陽で熱せられても、その熱が空気層で遮断され直接シートに伝わりにくくなります。
効果のモデル化と簡易試算(熱収支の考え方/試算例)
実際にシート工法がどれほど建物の温度環境とエネルギー消費に影響を与えるか、簡単なモデルで考えてみます。当社所有施設(場所:横浜市)の金属折板屋根に遮熱シート付き薄膜太陽電池パネルを施工し、真夏の一定期間にわたり屋根表面温度と室内温度を計測しました。
当社所有施設での遮熱効果検証試験の結果
シート工法を施工し影になっている屋根の表面温度と、直射日光が当たる屋根の表面温度の比較を行いました。
ひと夏分(6~9月)の温度データを分析し、施工した屋根表面は未施工に比べて最大で15℃、平均で約6.5℃温度上昇を低減できることが分かりました。
熱収支と電力コストの試算例
この温度データをもとに建物の熱収支を考えます。屋根に入る日射エネルギーの一部は屋根材に吸収され熱として蓄えられますが、遮熱シートで反射することで吸収熱量そのものを減らせます。
これを受けて室内の冷房負荷をエネルギーシュミレーションしてみました。モデルでは屋根からの熱流入が冷房負荷(空調が取り除かなければならない熱量)に寄与すると仮定し、屋根表面温度の差から熱流入差を計算します。
シミュレーション結果
計算の結果、遮熱シート施工により真夏の期間中の冷房エネルギー消費量が約26%削減される見込みとなりました。また電力料金に換算すると、例えば夏季4か月で約80万円の電力コスト削減効果が期待できるという試算結果が得られました。
(※5,000平方メートルの倉庫、室温26℃を想定)
参考文献
- 1. 環境省、「環境技術実証事業 工法資料 ヒートアイランド対策技術分野 建造物外皮による空調負荷低減等技術」(平成25年度)
期待できるメリット(空調負荷低減・快適性・エネルギーコスト)
シート工法による遮熱対策には、多くのメリットが期待できます。主なポイントを挙げると次のとおりです。
空調負荷の低減
屋根からの熱が減ることで室内温度の上昇が抑えられ、エアコンの稼働負荷が下がります。実証実験では遮熱シート施工により屋根の温度が最大15℃低下し、工場・倉庫の冷房消費電力が約20〜30%削減できる可能性が確認されています。屋根温度を下げて空調機器の最大負荷運転を減らすことで、エアコン自体の寿命延長にもつながるとされています。空調負荷が減ればピーク電力の削減にもなり、結果として電気料金の節約や省エネ・脱炭素にも寄与します。
快適性の向上
遮熱された建物内部は、夏場でも体感温度の上昇が抑えられます。屋内環境の温度が下がれば作業者の熱中症リスクも低減し、工場や倉庫での作業環境が大幅に改善します 。実際、「太陽光パネル設置後に夏の暑さが和らいだ」という声が寄せられるほど、遮熱効果は体感できるレベルです 。またシート工法は雨音を和らげる効果もあり、屋根裏にこもる暑さや騒音が減ることで居住性・作業性の向上が期待できます 。
よくある誤解(断熱材との違い)
最後に、遮熱シート工法に関してよくある疑問や誤解について整理します。
誤解「断熱材を入れれば遮熱は不要?」 – 断熱材との違い
一部には「屋根裏に断熱材を敷き詰めれば暑さ対策は十分では?」という声もあります。しかし、断熱材は主に伝導熱・対流熱を遅らせるものに過ぎず、輻射熱を跳ね返す機能はありません 。夏の強烈な日射で熱せられた屋根は断熱材越しに赤外線を放射し続け、断熱材自体も蓄熱してしまいます 。その結果、時間の経過とともに室内に熱がじわじわ伝わり、断熱材だけでは真夏の室温上昇を防ぎきれない場合があります。
遮熱シートは輻射熱を大幅に反射して熱そのものの侵入を防ぐため、断熱材では防げない部分を補完できます 。断熱と遮熱は対立するものではなく、組み合わせて使うことで相乗効果も期待できます。
まとめ
シート工法による遮熱対策は、太陽光を利用しながら屋根表面の温度上昇を抑える実用的な方法です。
遮熱シートが輻射熱を反射し、シートと屋根の間にできる空気層が断熱層として働くことで、建物内部への熱侵入を大幅に減らします。
その結果、工場や倉庫では空調負荷が下がり、省エネ・快適性・設備寿命の向上といった複合的な効果が期待できます。
この記事を書いた人
未来戦略室 プロジェクトマネージャー 永石 暁さん
2010年新卒入社。国内外プロジェクトで機械エンジニアを経験後、現部署にて新規事業開発およびスタートアップ投資でエネルギー分野を担当し、「どこでも発電所」事業のリーダーを務める。早期からペロブスカイト太陽電池製造のスタートアップと連携し、プラントエンジニアの知見を活かして”シート工法”を発明。設置施工の立場から薄膜太陽電池業界に参入し、登壇・寄稿実績多数。趣味は温泉とラーメン屋巡り。